レントゲン、MRI検査で何が判るのでしょうか?
むち打ち損傷で骨や軟部組織の損傷がハッキリと解ることは非常に稀です。症状が長期化する理由の1つとして加齢に伴う骨や組織(椎間板や神経)の変化などがあります。これらを確認することは治療方針や方法を決定する上で意味があるのです。
また個人の筋肉の強さや柔軟性、姿勢なども予後に影響してきます。
正常頚椎側面像
頚椎後弯(姿勢不良)
変形性頸椎症
(骨棘形成、椎間板狭少化)
頚椎斜位像
専門医による診察・検査の重要性は?
頚椎損傷は後頭部や後頚部痛、頚部の可動域制限、めまい、耳鳴りといった症状が出現します。受傷後に強い耳鳴りやめまいがある場合は上位の頚椎損傷も疑われますので注意が必要です。
病態によっては通常のレントゲン検査だけではっきりとした診断のつかないことや、受傷初期には現れてこないものもあります。
(撮影条件や撮影方法が原因で受傷後1ヶ月以上見逃されていた頚椎損傷の多くが上位頚椎であったとの報告もあります)経験を積んだ専門医の場合、いろいろな角度からレントゲンを撮影したり、今後起こりうる症状を考慮した上で検査を行います。
開口位正面像
頚椎後屈位
頚椎前屈像
3D-CT画像
※上位頚椎損傷
上位頚椎とは7つある頚椎のうち上部の第1・第2頚椎を指します。病態としてはこの部分の
脱臼・骨折で、受傷原因は交通事故、墜落、転倒などが挙げられます。診断の際には多方向
からのレントゲン撮影のほかにCT画像も必要な場合があります。(撮影条件や撮影方法が
原因で受傷後1ヶ月以上見逃されていた頚椎損傷の多くが上位頚椎であったとの報告もあります)
→:骨折線  ○:骨折部    
第1頚椎骨折CT像(陳旧性)
第1頚椎骨折3D-CT像
(陳旧性)
第2頚椎骨折3D-CT像
第2頚椎骨折側面像
(ジェファーソン骨折)
(ハングマン骨折)




組織が急激に引き伸ばされることで損傷し、初期には炎症による痛みが出現します。痛みの持続は交感神経を緊張させ
血管収縮による血流の減少を引き起こし、筋肉は硬く収縮(コリ)・緊張した状態となり運動制限を伴います。
なかには脊髄や神経根といった重要な組織に損傷がみられるケースもあるので、必ず専門医の診断を受けることが大切です。
自律神経症状が出現する仕組みとは?
当初はなくても受傷より2〜3週間くらい経過した後に、自律神経症状を訴えるケースもみられます。頚部は上肢の神経が出入りしている場所であるとともに、多くの自律神経の神経節が集まる場所でもあります。過度に緊張した頚部筋の影響で強いストレスがかかり、交感神経を刺激して自律神経症状を引き起こすと考えられています。
背中や胸に痛みを感じますが頚への衝撃と関係がありますか?
初期には肩から背中にかけての筋肉および筋膜損傷により、肩甲間部などに痛みを感じる場合があります。
また、頚椎の病変により肩甲部や前胸部に痛みを訴える患者さんがいます。頚から出る神経の一部は肩甲背神経となり肩甲骨周囲の筋肉に分布し、同じく長胸神経は胸部にある筋肉に分布してこれを支配しています。これらの刺激症状が放散痛を引き起こすことがあるのです。
病変のある頚部に痛みを感じないことがあるのは?
例えば皆さんの中にも肘をぶつけて指先に響くシビレを経験したことがある方もいると思います。その時、指先に感じるシビレほど肘にはあまり痛みを感じません。衝撃を受けた部位よりも神経の走行に沿った遠く離れた箇所にシビレ、時には痛みを感じることがあるのです。同様に頚椎に病変がある場合も、頚、肩、肩甲部、腕、胸などいろいろな部位が痛む可能性があります。
また、人間の痛みに対する感覚は最大の痛みを最も強く感じることがあります。2カ所、3カ所と痛みがある場合、いま一番痛みの強い箇所に神経が集中して他の箇所は痛みを感じない事が(正確には感じにくい)あるのです。
バレ・リュー症候群(頚部交感神経刺激症状)とは?
受傷により過度に緊張した頚部の交感神経が、同じく頚部周囲の動脈に影響を及ぼし血流障害を引き起こすことで症状が出現すると考えられていますが、まだまだ解明されていない部分も多い病態です。症状は主に耳の障害(めまい・耳鳴り・難聴)、眼の障害(かすみ・疲れ・視力低下)、喉の障害(つまり感・飲食物の飲み込みにくさ)などの耳鼻科・眼科的症状が多くみられます。
しかし検査などでは、はっきりした原因が見付かりにくいため専門医の診断が重要となります。
外傷性低髄液圧症候群とは?
この病態は必ずしも交通事故等による衝撃で高頻度に出現する訳ではありません。診断と治療には専門的知識を要するため神経内科、麻酔科、脳神経外科専門医などの判断が重要となります。症状は主に激しい頭痛と吐き気です。頭痛は寝ている時よりも起き上がると強く、頭を振ったりすると更に激しくなります。原因は脳内に充たされている髄液が何らかの理由で漏出したためで、最も多いのは腰椎麻酔や髄液検査の際に針から髄液が漏れ、低髄液圧になる場合です。そのほか漏出のきっかけとして、覚えていない位の些細なストレスで髄膜に亀裂が生じることもあると云われていますが、原因不明の部分も少なくありません。





投薬やブロック注射の治療効果は?

処方される薬や注射などは患者さんの病態によりさまざまです。
各々の生活の質をなるべく落とさない事を第一の目的に、いま現在の症状に対してだけではなく、その後の経過も視野に入れながら治療方法を決定していきます。
比較的使用する機会の多い薬や注射の一例を挙げてみました。

<投薬>
消炎鎮痛剤(炎症を静め痛みを抑えます)      
筋弛緩剤 (過度に緊張した筋肉をやわらげます)
ビタミン剤(血行やしびれなどを改善します)
精神安定剤(精神や自律神経を安定させます) など

<ブロック注射>
星状神経節ブロック ・肩甲上神経ブロック・ 腰部硬膜外ブロック  など
『痛みの悪循環』

鍼灸マッサージ治療はなぜ効果的なのでしょうか?
鍼灸マッサージ治療には、痛みや筋肉の緊張をやわらげる作用があります。
これらは長期化しているむち打ち損傷の諸症状に対して直接働きかけるものと思います。
痛みや自律神経症状の多くは筋肉の収縮・過緊張に原因がある場合も多く、血流の改善は筋肉内の発痛物質・疲労物質を除去する意味でとても重要です。

鍼灸マッサージ治療を受ける際の注意点は?
東洋医学療法に対して知識があったり、それらの治療を実際に取り入れている医師に相談してみると良いでしょう。
鍼灸マッサージ治療で改善が期待できるものも多いのですが、 病態や時期により治療をしてはいけないことがあります。
また、治療を開始しても個体差で効果が現れにくいこともあります。このような場合は治療方法を変更することもありますので期間中も定期的な医師の診察をお勧めします。

運動療法の効果は?
痛みなどで頚や肩の動きが減ると、血行不良によって筋肉の柔軟性が悪くなってきます。急性期が過ぎ、痛みがやや落ち着いてきた頃から軽いストレッチや体操などを少しずつ始め、筋肉をほぐしていきましょう。特にお風呂上がりなど筋肉が温まった時には効果的です。
また、有酸素運動(自転車やウォーキングなど)で全身の血液循環を良くすることも大切です。ただし、 病態により行ってはならない運動や控えたほうが良い時期がありますので、運動を始める前は必ず医師に相談して下さい。  
前屈ストレッチ
側屈ストレッチ
肩の上げ下げ
タオル体操(共に僧帽筋)





天気の悪い日に痛みなどの症状が強まるのは?
基本的に人間は活動時に自律神経系の交感神経が活発に働き、休息時には副交感神経が働いています。天候が良い時は交感神経が優位となり、活動がし易くなります。身体は高血圧・高血糖などの状態になり、痛みは感じにくくなるそうです。
逆に天候の悪い時には副交感神経が優位となって、痛みを感じる知覚神経も亢進されています。身体を休ませる方向に仕組みが変わっているのです。動物も天気の悪い時は積極的に獲物を獲ったり、食料を集めたりはしません。獲物を追いかけている時は痛みを感じていない方が良い訳ですから、交感神経が優位に働いているのでしょう。元来人間の身体は天候の悪い日に身体を休ませるようになっているのかも知れません。
自律神経の亢進状態
交感神経興奮状態
副交感神経興奮状態
身体活動に適する状態
(活動時、運動時)
活動後の回復に適する状態
(休息時、睡眠時)
心臓血管系促進
心臓血管系抑制
消化吸収系抑制
消化吸収系促進
日常生活上の過ごし方や、心構えで気をることは?
1.症状が落ち着いてきたら、普段の生活の中でウォーキングや水泳などの軽運動を積極的に取り入れましょう。
※十分な身体の動きが制限されていたことで筋肉の柔軟性も低下していることがあるためです。

2.睡眠不足や暴飲暴食などの身体に変調を来たす生活は避けましょう。また上手にストレスを発散しましょう。
自律神経の働きに悪影響をおよぼし易くなります。

3.長時間同一姿勢での作業には適当に休息をとりましょう。
過度に筋肉や関節に負担をかける姿勢です

4.被害者意識を強く持ったり、「後で出てくる」などの周囲の人の言葉にあまり惑わされないようにしましょう。
いつかは治るくらいの気構えでいることも大切です。